ふにゅう

川端裕人著「ふにゅう」。

仕事と育児の両立をはかる現代の子育て風景を、父の視点から描いた5編の短編からなる。
仕事に燃える妻にかわり育児休暇をとり妻にかわって父の乳なる「ふにゅう」を愛娘に与えたいと切望する父、妻の出産におびえる父、妻の長期不在の間ふたりの幼い我が子を抱えて奮戦する父などそれぞれの子育て事情を描く。

べたべたしすぎず、さらりとユーモアまじえて描写している文体に好感。

いやー。実際のところ身につまされる話ばかりで。
是非武典さんには全編読んでほしい一冊。もちろん、武典さんだけでなく、仕事子育てに頑張るお父さん・お母さんに。
ここに描かれている風景は、いまでも必ずしも「当たり前」ではないと思うが、都会を中心に似たような風景が展開されている場があるのも、事実だとおもう。

うちも私が一年間の育児休暇後に絵理子を保育園に預け、仕事復帰する予定なので。
お迎えなどきっと武典さんと分担していく部分は多いし、私の出張などで武典さんにまかせて外泊せねばならないところもあると思われるし。

絵理子が産まれる前に保育園に見学にいったときは「来年4月からは預けて働く。」と考えていたのだが、いざこのたよりなげな生き物が産まれてみると、気持ちに微妙に変化がうまれる。
かといって、決心を変えるつもりはないのだけれど。
きっといざ預けるときには、色々考えちゃうんだろうな。心のすきをつかれた感じ。

きっとここに描かれているのは私、らが赤ちゃんだった頃の男性が外で働き女性は家を守るという考えがごく当たり前だった頃には、ほとんど考えられなかった風景なのだろう。

では絵理子が成長して子どもを育てるようになった頃には、どういう風景が展開されるようになっているんだろう。