エマ

「エマ」ジェーン・オースティンの最高傑作といわれる作品。

  • エマ*1

土地の名家にうまれ、美貌と知性にも恵まれ何不自由なく暮らすエマ。
過ちや失敗を乗り越えひとりの女性として成長していく姿を、エマの心理状態の変化を中心に精緻な描写で鮮やかに描く。

私にとって、ジェーン・オースティン本は「説き伏せられて」「自負と偏見」についで3作品目だった。
これまで読んだ3つの作品の中で人物設定が精緻に描かれているように感じた。

ヒロインのいささか鼻につく高慢さ、貴族趣味。
21歳の未婚女性であるにもかかわらず、物事をすべて見通したような言動をとる高慢さ。すでにその年にして日本語でいうところの「くっつけばばあ」的役割を演じたがっているところが滑稽。それは、20歳前後にありがちな、「根拠のない自信」が陥る失敗を皮肉まじりに描きたいがために、そういう設定がなされているのではないかと思うのだが。

ヒロイン以外のひとびとにもそれぞれ長所・短所があり、そういった人々が集まって織りなす人間模様が身近に感じられるし、それぞれの人物に魅力やまた嫌悪感を感じる。たいへんに人間くさい。
これは家庭小説か、女性のための「教本」か。結局は通俗小説か。

義理立てや社交、対面が重要視される時代・階層で、「主張する強い女性」の姿が描かれている点が興味深い。

*1:上巻 isbn:4003222245、下巻 isbn:4003222253