いつか晴れた日に−分別と多感−

19世紀英国の田園を舞台に、対照的な性格の2人の姉妹の恋愛と結婚にいたるまでの過程をコミカルに描く。95年に邦題「いつか晴れた日に」で映画化された。

テーマは他のオースティン本と同じく「理想の結婚相手探し」。
大金持ちでもないが、生活に困っているわけでもない、母とともに田舎のカッテッジに住むダッシュウッド3姉妹のうち上のふたりがこの本の主人公。

上のエリナは理知的で、下のマリアンは情熱的と描かれているが、意地悪な見方をすれば、エリナは理屈っぽくほんとには何を望んでいるのかわかりずらい。マリアンは、衝動的な行動にかられやすい浅薄な性格ともよめる。それに、相手となる男性がいまひとつ魅力でないように思えた。人物像や事情の背景がいまひとつ不鮮明で、人物に不誠実さを感じてしまうところもあり。特に、最後のプロポーズ→婚約成立の過程がいかにも唐突に思える。
オースティンは、人物描写のうまさが魅力のひとつと思っていただけに、それがいまひとつ不明瞭なのが残念。

随所に年収、社会的地位が強調して描かれているところなど、階級社会への皮肉が生きている。
登場人物の人物描写はあえてあいまいなところを残し読者の想像の範囲を残した上で、結婚にまつわる駆け引きをドラマティックに描いてみせようとしたという風にも読めるかも。