X,Y,Zの悲劇

突然探偵ものが読みたくなり、いまさらだけど、エラリイ・クイーンを読んでみた。いずれもハヤカワ文庫。感想を簡単に。

  • Xの悲劇*1

元俳優で聴力を失って現役を引退したドルリイ・レーン氏が探偵として初登場。
シャーロックホームズシリーズは、ホームズが超人的な才能を示し、背丈さえもごまかし(?)老若男女さまざまに変装して出没し、その「変装術」が事件のカギとなったりもする。レーン氏も変装してみせるが、元俳優ならそういうこともできるかとおもったり。それにしても、設定にやや無理があるのは否めないが。
もったいぶったレーン氏と、その態度に不満とときには不信も抱きつつも結局はたよってしまう警視のからみが面白かった。長編なのにあきさせないストーリー展開が楽しめた。
読み始めからなぜ「X」なんだろうかと思っていたら、最後の最後にその謎に対する回答あり。

  • Yの悲劇*2

特に日本で、3シリーズの中で最高傑作だと声が高いとの本作。
犯罪の異常性という点で目をひく。また、個性的な登場人物にも興味をそそられる。
あと。エミリーが元凶だというハッター家の悲劇性については、ヒントだけ与え具体的には描かず、読者の想像にまかせた形になっているのは、1932年という発表年によるのだろうか。今ごろ発表の作品なら微に入り細にわたり、エグイほどに描かれそうなものだ。

  • Zの悲劇*3

X,Yとは異なり、女性(警視の娘)に語らせる形で物語が進行。
犯罪の動機が、事件の大きさに比べ小さく、バランスが悪い気がしてしまった。
ややもどかしいストーリー展開。

3作に共通して思ったが、人物描写がうまい。
登場人物それぞれの性格や心の微妙な動きを、描きすぎもせず、「こういうひともいるな。」と読者の想像できる余地も残しつつ、鮮やかに描きだしている。
もちろん今回は翻訳文を読んでいるので、それは宇野利泰さんという翻訳家の技量によるところも大きいのだろうが。

そういえば、「XYZ」という名のカクテルがあったな。
ラムベースのカクテル。いつものノリなら、ここでそれを作って飲んで読了を寿ぐところだが、いまは妊娠中(臨月)なので、あとしばらくはお預けだな。

ドルリイ・レーンシリーズ4作目の「ドルリイ・レーン最後の事件」はただいま発注中。
届くのが楽しみ。